こんにちは♪
皆さま、新国立劇場バレエによる「ニューイヤー・バレエ」はご覧になりましたか?
今年はコロナの影響により中止のお知らせも出ていましたが、なんと2021年1月11日に無料で配信されました。
ただし、アーカイブなしでしたので、観れなかった方も大勢いらっしゃるかと思います。
私は運よく、最初から最後まで拝見させていただきましたので、ここに備忘録として感想を残したいと思います。
- 2021年のニューイヤーバレエの様子が気になる方
- ご自身の感想と比較したい方
- バレエの配信公演がどういうものなのか気になる方
ぜひ、この記事をお読みいただけたら嬉しいです。
では、参りましょう♪
目次
ニューイヤーバレエとは?
日本の代表的なバレエ団の一つである、新国立劇場バレエ団により毎年年明け早々に上演されるガラ公演です。
バレエでいうガラ公演とは、様々なダンサーが登場し、作品の一部抜粋や小作品を披露する公演のことです。
定番のクラシックバレエから全く新しいコンテンポラリーまで新国立劇場の多面的なバレエが楽しめる、バレエ好きにはたまらない公演となっています。
ニューイヤーバレエ配信の概要
始めに、今回のニューイヤー・バレエの内容をざっくりおさらいします。
ニューイヤー・バレエ【新国立劇場バレエ団】
日時:2021年1月11日(月・祝) 14:00~
場所:新国立劇場より無観客ライブ配信
料金:無料
演目:パキータ / Contact / ソワレ・ド・バレエ / カンパネラ / ペンギン・カフェ
配信場所:YouTube / facebook
公式ページはこちら
当初の予定では、1月9日(土)から11日(月・祝)まで3日間にわたって上演される予定でしたが、新型コロナウィルス感染拡大の影響により、中止となってしまいました。
そこで、新国立劇場バレエがとってくださった方法が、無観客上演による無料のライブ配信でした。
定番クラシックの大作『パキータ』をはじめ、新国立劇場バレエ団のダンサーが振り付けたコンテンポラリー作品、また2020年9月に逝去された深川秀夫さんが振付された『ソワレ・ド・バレエ』、そしてイギリスの振付家であり新国立劇場で舞踊監督を務めたこともあるビントレー振付の『ペンギン・カフェ』が上演されました。
ニューイヤーバレエ配信の感想【第1部】
『パキータ』
【音楽】レオン・ミンクス
【振付】マリウス・プティパ
第1部はクラシックの大定番である、『パキータ』でした。
主役はプリンシパルの米沢唯さんと、渡邊峻郁さん。
新国立劇場バレエ団では久々の上演だったそうですが、ダンサーたちの鮮やかなテクニックがまぶしかったです。
主役のお二人はもちろん、ソリストの方々のヴァリエーションもそれぞれ華やかで素敵でした。
個人的には最後のヴァリエーションを踊られた奥田花純さんに目を奪われました。
第4ヴァリエーションはジャンプも回転もとても多くてしんどそうなのですが(汗)、涼やかに決められていて、流石ですね。
また、第3ヴァリエーションを踊られた益田裕子さんも個人的にはとても好きでした。
なんというか、日本人らしい奥ゆかしさを感じて…着物がよく似合いそうだなと(どんな感想)。
赤の衣装がとてもよくお似合いでした。
パキータのパ・ド・トロワを観たのはほぼ初めてだったのですが、よかったですね!
パ・ド・トロワの男性パートを踊られたのは、先日の『ドン・キホーテ』で主役に抜擢された速水渉悟さん。
とても爽やかで、ジャンプの空中姿勢がとても綺麗だったのが印象的でした。
最後のコーダの米沢唯さんのフェッテはやはり圧巻でしたね…!
3回転を当然のように3回以上入れられていたと思うのですが、なんという体幹を持っているのだろうと恐ろしくも思いました(笑)
また、パキータを見ていて思ったのですが、吉田都さんイズムが団員全員に流れ始めているのではないでしょうか。
一つ一つの踊りがはっきりしていて、ポジションも綺麗だし、何よりエポールマン(特に鎖骨のあたりから上の体の使い方)がとても綺麗だなと改めて思いました。
また、ダンサー全員がとてもいい笑顔をしていて、全身から「踊れる喜び」を感じているように見えました。
踊りたくても踊れない、披露したくても披露できない…これまでの苦労があったからこそ、にじみ出るものだと思いますが、しょっぱなから涙を誘われて、こちらは大変でした。
少しだけ超個人的なお話しをしてしまいますと、パキータは私個人的にもかなり思い入れのある踊りで、特にパキータエトワールは一時期ずっとコンクールで踊っていたので、感慨深かったです。
米沢唯さん、綺麗でした。
こんなエトワールになりたかったなぁ…。
…さて、次に行きましょう。
ニューイヤーバレエ配信の感想【第2部】
『Contact』
【音楽】オーラヴル・アルナルズ
【振付】木下嘉人
『Contact』を振付した木下嘉人さんは、新国立劇場バレエ団のダンサーです。
新国立劇場バレエ団から振付家を育てるプロジェクト<NBJ Choregraphic Group>から生まれた作品で、2020年3月に上演予定でしたが、コロナの影響で叶いませんでした。
踊ったのは、振付した木下嘉人さんと、プリンシパルの小野絢子さん。
クラシック作品の小野絢子さんはよくお目にかかりますが、コンテンポラリーは新鮮でした。
作品のテーマは『触れ合い』ということで、山下さんと小野さんの触れるようで触れないような距離感の繊細な表現が、印象的でした。
特に、最後の方の山下さんが小野さんの頬に手を添える場面。
こういう仕草をするのに、触れてしまえば簡単ですが、触れることなく見事に表現される姿を見て、バレエの表現の繊細さを実感しました。
コンテンポラリーの魅力は、バレエの身体表現の「表現」の部分を衣装や舞台セットに頼らず、ダンサーの体一つで勝負するところだと思うのですが、本作品でも「表現」の本質を見られたような気がします。
顔の表情も、指先も、背中までも、体を「表現する道具」として存分に動かすお二人の姿に、バレエってほんとはこういう何かを伝えるためにあるんだよなぁと感じていました。
コロナの感染防止の対策として、ソーシャルディスタンスが叫ばれる世の中ですので、他人に触れるということが少ないと思いますが、この作品を見て「触れ合う」ことで起きる感情の変化を客観的に見せられたような気がします。
『ソワレ・ド・バレエ』
【音楽】アレクサンドル・グラズノフ
【振付】深川秀夫
2020年9月、バレエダンサー、振付家の深川秀夫さんが亡くなりました。
ドイツを中心にトップダンサーとして世界的に活躍し、帰国後はフリーで日本各地のバレエ団に新作振付の数々を提供していました。
『ソワレ・ド・バレエ』はそんな故・深川秀夫さんの代表作の一つ。
グラズノフが作曲した「四季」、「ライモンダ」などの楽曲に、深川さんが振り付けたシンフォニックバレエです。
※シンフォニックバレエとは、主題のない、交響曲に振り付けられたバレエのことを指します。
踊ったのは、ファースト・ソリストの池田理沙子さんと、ソリストの中家正博さん。
グラズノフの優しく美しい音楽にのせて、頭の先から足の先まで儚く、柔らかく、溶けてなくなってしまいそうなバレエが途切れなく紡がれていて、素敵でした。
深井さんの振付の特徴として、「ダンサーの魅力を最大限引き出す」というものがあるそうなのですが、この楽曲もダンサーの美しい表現が、余すところなく発揮されているなと感じます。
気づいたら指先まで目が行ってしまっていて、あっという間に終わってしまいました。
こんなに柔らかいバレエは初めて。
『カンパネラ』
【音楽】フランツ・リスト
【振付】貝川鐵夫
『カンパネラ』を振り付けたのはファースト・ソリストの貝川鐵夫さん。
貝川さんは、新国立劇場の代表作『竜宮 りゅぐう』で振付補佐をつとめるなど、振付家としても大注目されている存在です。
『カンパネラ』は、舞台上にピアノを置き、ピアノの生演奏と一人のダンサーのみで踊られるコンテンポラリー。
ダンサーは新国立劇場を代表するプリンシパルの福岡雄大さんでした。
リストの名曲「ラ・カンパネラ」にのせて、格闘技のような凛々しいダンスが繰り広げられました。
ピアノを演奏したのは、ピアニストの山中惇史さん。
山中さんの澄み切ったカンパネラの演奏に、福岡さんの逞しくしなやかな肉体表現が、実に贅沢な空間を作り上げていました。
さすが、王者の踊りといった貫録を感じましたね。
こんなの見せられたら惚れてまうやろ!!
ニューイヤーバレエ配信の感想【第3部】
『ペンギン・カフェ』
【音楽】サイモン・ジェフェス
【振付】デヴィッド・ビントレー
さて、最後の演目は『ペンギン・カフェ』です。
振付は、バーミンガム・ロイヤル・バレエ団の芸術監督であり、新国立劇場でも舞踊監督の経験のあるデヴィッド・ビントレーさん。
ビントレーさんは振付家としてこれまで50近くのバレエ作品を生み出している21世紀最大の振付家です。
『ペンギン・カフェ』は、"ペンギン"をはじめとする、様々な動物たちの被り物をかぶったダンサーたちがコミカルにダンスを披露する、子どもたちにも人気の作品。
しかし、登場する動物たちは全て絶滅動物・絶滅危惧動物です。
ビントレーさんはただ可愛らしい動物たちの姿を見せたかったのではなく、痛々しいほどの文明批判と現代の環境問題へのメッセージを伝えるために、この作品を振り付けました。
登場する動物たちは、オオウミガラス(ペンギン)、ユタのオオツノヒツジ、テキサスのカンガルーネズミ、豚鼻スカンクにつくノミ、ケープヤマシマウマ、熱帯雨林の家族、そしてブラジルのウーリーモンキーです。
まず、ユタのオオツノヒツジを踊られたのは、米沢唯さんです。
パートナーである井澤駿さんとともに、なんとも色っぽい、女性らしい魅力たっぷりなヒツジを演じられていました。
決めポーズで、井澤さんの足にしがみついているのが可愛らしく、ぐっと来てしまいました。
次に、テキサスのカンガルーネズミを踊られたのは、ファースト・ソリストの福田圭吾さん。
カンガルーネズミは、最初の丸まったポーズからスキップのようなステップの一つ一つまで、一番動物っぽい動きでした!
休みのないダンスはかなり体力的には辛かったと思いますが、そうは感じさせないのは流石プロですね。
次に、豚鼻スカンクにつくノミを踊られたのは、ソリストの五月女遥さん。
一緒に踊っていたのは、イギリスの民族舞踊モリス・ダンスの踊り手だったようですが、その踊り手たちに混じってぴょんぴょん踊る姿がとても可愛らしかったです。
途中でダンサーたちがいきなり戦いだしたときは、すごく怖がっていて、感情の上がり下がりが大変分かりやすく、より可愛らしさがアップしていました。
ノミらしく、随所でダンサーにひっつくのがまたなんとも可愛らしく…って可愛いしか言ってないですね(笑)
とにかく、可愛かったです。
さて、お次はケープヤマシマウマを踊られた奥村康祐さん。プリンシパルです。
登場した瞬間から、オーラがありました。
一つ一つのポーズの意味はよく分からないのですが、かなり誇り高いことは分かりました。
一緒に、動物の毛皮を身に着けたモデルたちが踊っていましたが、彼女たちは全く表情を変えません。
この中にはなんと先ほどヒツジを踊られた米沢唯さんもいました。(なんという早替え。)
踊りの最後の方では、シマウマは動けなくなってしまうのですが、女性たちは顔色一つ変えずに去っていきます。
動物が消えようとしても、毛皮を使う人間には痛みがわからない…。
自分も彼女たちと同じことをしているのだなと思うと、胸が苦しくなります。
次に登場するのは、熱帯雨林の家族。
ダンサーは本島美和さん、貝川鐵夫さん、そして子ども役の関晶帆さん。
熱帯雨林の家族って、なんの動物…?と思ったのですが、人間でした。
現代でも伝統を守って生活をしている森林の人々の数はとても少なく、ほとんどの種族の人々は、開拓者によって移住させられたり、政府によって強制され、伝統的な生活様式をあきらめざるを得なかったそうです。
何かに怯えるなか、支え合う家族。
随所随所に本島美和さんが子どもに微笑む姿があり、「母親」という存在の暖かさを実感しました。
そして、満を持して登場したのがブラジルのウーリーモンキー。
踊っていたのは福岡雄大さん。
さきほど『カンパネラ』で強く美しい踊りを披露した同じ人とは思えないほど、サルでした。
特に、感動したのは「手」です。
バレエダンサーの手は指の先まで神経が行き届いた美しい手先が特徴なのですが、このサルを踊っていた福岡さんの手は完全にサルでした。
こんな見事に演じ分けられるもの…??
流石、プリンシパルダンサーですね。
そして、何も言わずとも感じる「ボス」感。強い。
最後に、主人公であるオオウミガラス(ペンギン)は、とにかく可愛いペンギンステップで、カフェの店員役をしていました。
最初から最後まであのぺったんぺったん音がするようなステップをし続けるのは、至難の業でしょう…。
本当にペンギンになりそう。
演じたのはファースト・アーティストの広瀬碧さん。
被り物を取っても可愛らしかった!
しかし、このオオウミガラスは登場する動物たちの中で唯一絶滅しています。
そのためか、最後の演出では他の動物たちはノアの箱舟を模したような船に乗っていくのですが、オオウミガラスだけは取り残されてしまいます。
コミカルなダンスとは相反的に、胸が締め付けられるようなとても切ないエンディングでした。
ニューイヤーバレエ配信の感想【その他】
ここからは、演目以外の感想を記録しておきます!
吉田都監督のサプライズ挨拶
始まった瞬間、画面に現れたのはなんと吉田都舞踊芸術監督でした!
いつもと変わらない笑顔で、「観に来てくださってありがとうございます。」と言われて、それだけで涙が出そうでした。
バレエは踊っているダンサーだけでは完成しなくて、見てくださるお客さんがいて初めてバレエとして成り立ちます。
だから、たとえカメラの向こう側だとしても、"見ている人がいること"が、都さんにとっても嬉しかったのだろうなと感じました。
客側は全員、「こちらこそですよ!!」と叫んでいたと思いますが。
そして、ダンサーたちへの労いと、「ペンギン・カフェ」の演出の変更をお知らせくださいました。
こうした気遣いの一つ一つに、都さんの人柄が現れているようで、ますます好きになりました。
改めて、私たちに「ニューイヤー・バレエ」を見せてくださって、ありがとうございました!
吉田都さんについては、こちらの記事でも紹介しております。
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まるで劇場にいるかのような
バレエの公演では、踊った後レヴェランス(お辞儀)をして、いったん幕が下りた後に、主要ダンサーたちが幕の切れ目から出てきて再度挨拶します。
これは、会場にいるお客さんとより近い挨拶でもあるのですが、正直、オンラインならいらないはずです。
だって、距離はほぼ変わらないから。
でも、今回のニューイヤー・バレエではこの幕が下りた後の挨拶がありました。
それが、すごく劇場感を出していて、よかったです。
本当に会場に足を運んでいるかのような、気持ちになれました。
ライブ配信の楽しみ方
そして、今回はアーカイブが残らない公演ということで、この時間に見ていた人達だけがTwitterなどで感想を言い合っているのも、新鮮でした。
同じ時間に、同じ舞台を共有するって、本当に劇場と変わらないですよね。
それに、Twitterで踊りの感想をつぶやいている人たちを見て、あ、こういう見方もあるんだ、とか、やっぱりこう思ったよね!とか、感想の共有をすることができて、これは逆に会場ではできないことだよなぁと思いました。
会場ではまず、踊ってる途中にスマホは見ないし、声も出さないので、その時、感じた感情を誰かに伝えることってしないのです。
なので、みんなが今、感じたことが流れてくるTwitterを見ながらライブ配信を見るのも、なかなか楽しいなと感じました。
もちろん、Twitterに気を取られて踊りを見ないんじゃ、本末転倒なんですけどね。
おわりに ニューイヤーバレエの配信、ありがとうございました!!
私にしては珍しく、長々と感想を連ねてしまいました。
感じたままを書いているので、読みづらい箇所もあったと思います。申し訳ないです。
ニューイヤー・バレエの無観客無料ライブ配信。
新たな試みだったと思いますが、これをきっかけに、バレエを好きな人たちが増えたらいいな♪
また、吉田都監督のデビュー作の『ドン・キホーテ』の配信も1/15(金)まで配信されておりますので、興味のある方はぜひご覧ください!
リハーサル風景などのスペシャルコンテンツもありますよ!
新国立劇場バレエ団『ドン・キホーテ』の配信について詳しくはこちら
改めて、新国立劇場バレエ団のみなさま、素敵な舞台をありがとうございました!!
最後までお読みいただき、ありがとうございます。